FIRE(経済的自立と早期リタイア)を目指して、せっせと投資を続けてきた。
インデックス? 債券? 現金? それっぽく分散しているつもり。
でも、ふとよぎるのが――
「このポートフォリオ、本当に大丈夫なのか?」
リスクはどれくらい?
将来どれだけ増える見込み?
不況がきたとき、資産はどうなる?
こうした疑問を放置してしまうと、せっかくFIREしても「資産が減っていく不安」に耐えられなくなるかもしれません。
また、4%ルールで有名なトリニティスタディにおいても、ポートフォリオによっては、4%ルールが破綻することが示されています。
最悪の場合、FIREが破綻して働き直す羽目になることだってあり得るのです。
1.この記事で得られること
この記事では、FIREに人気の代表的ポートフォリオ「S&P500単独、カウチポテト(株+債券)、カウチポテト(株+現金)」と筆者が設計した「FIREマニア版ポートフォリオ」を比較しながら、リターンとリスクを評価する具体的な方法を解説します。
使うのは「Portfolio Visualizer」という無料ツール。難しい計算なしで、誰でも数値を元に評価ができるようになります。
「評価指標って何を見ればいいの?」
「他のポートフォリオと比べて自分のはどう?」
「下落にどれくらい耐えられる?」
この記事を読み終えるころには、こうした疑問に自分で答えられるようになり、自分のFIREプランを評価して堅実なポートフォリオに改善できるようになるはずです。
2.ポートフォリオの評価の目的
FIREを目指すうえで、どんな資産配分が自分に合っているのかを明確にすることが目的です。
この記事の比較では、以下の2つの観点からポートフォリオを評価しています:
- リターン:どれだけ資産が増えたか(年平均リターン)
- リスク:どれだけブレ幅や下落に耐えることができるか(標準偏差・ドローダウンなど)
リターンはFIRE生活で暴落時の回復力や計画した利回りを生むかを評価します。リスクはリターンのブレが大きすぎて、FIRE生活が不安の日々にならないかを評価します。
評価の方法
ポートフォリオごとのパフォーマンスをPortfolio Visualizerという無料のシミュレーションツールを使って比較・分析しました。
主に以下の指標をもとに、それぞれのポートフォリオの特徴を数値で評価しています
分類 | 指標 | 解説 |
リターン評価指標 | 収益率 | 投下額に対する平均的な年間リターン |
リスク評価指標 | 標準偏差 | リターンの振れ幅の大きさ |
最大ドローダウン | 最高値から最安値までの最大下落率 | |
ベンチマーク相関 | 市場(S&P500)に対してどれだけ同じ動きをするか | |
リスク+リターン指標 | 暴落後の回復力 | 大きく下落したあとどれだけ速く・しっかり元値に戻すかを測る |
シャープレシオ | リスクあたりのリターンの効率 | |
ソルティノレシオ | 下振れリスクあたりのリターンの効率 |
比較対象となる4つのポートフォリオ
ポートフォリオ名 | 資産構成 |
FIREマニア版 | S&P500:50%、長期米国債:15%、金:15%、現金:20% |
カウチポテト債券50 | S&P500:50%、長期米国債:50% |
カウチポテト現金50 | S&P500:50%、現金:50% |
S&P500 | S&P500:100% |
長期米国債券はツールの制限上、EDVを採用しています。生債券を適用する場合は、以降で述べる債券部分の評価は、もっと安定します。
3.評価結果
下記がPortfolio Visualizerでの分析結果です。
パフォーマンスグラフ
このグラフは、2016年から2025年までのポートフォリオの成長推移を示しています。それぞれのポートフォリオが、初期投資額100万ドルから、どのように推移したかが描かれています。
各ラインの意味(凡例)
- 濃青(FIRE MANIA) FIREマニア版
- 緑(Bond50) カウチポテト債券50
- 水色(Cash50) カウチポテト現金50
- 濃い灰色(Vanguard S&P 500 ETF) S&P500
評価概要
リターン(最終到達額)
- S&P500が圧倒的なリターンを出しており、2025年には約300万ドル弱に。
- 次に高いのがFIRE MANIA。安定しつつもしっかり伸びています。
- カウチポテト債券50とカウチポテト現金50は比較的控えめな伸びで、特にカウチポテト債券50は中盤以降でやや劣勢。
リスク(ボラティリティ)
- S&P500単独は上下のブレが大きい(特に2020年、2022年、2024年あたりで顕著)。
- FIRE MANIAやカウチポテト現金50は下落局面での耐性が見られ、滑らかな曲線を描いています。
暴落耐性(コロナショック 2020年初頭)
- 全てのポートフォリオが一時的に下落していますが、
- S&P500の落ち込みが最も大きく、
- FIRE MANIAやカウチポテト現金50は比較的浅い下落に抑えられていることが分かります。
- S&P500の落ち込みが最も大きく、
回復期間の評価
アセット | ピーク→回復まで | 底→回復まで |
S&P500 | 約 13ヶ月 | 約 3ヶ月 |
FIREマニア | 約 22ヶ月 | 約 14ヶ月 |
カウチポテト現金50 | 約 15ヶ月 | 約 6ヶ月 |
カウチポテト債券50 | 未回復 |
S&P500はリスクは高いですが、上昇も早く、底から回復まで3ヶ月のスピードです。
パフォーマンスサマリー
指標 | FIREマニア版 | カウチポテト債券50 | カウチポテト現金50 | S&P500 |
年率リターン | 9.14% | 6.31% | 8.07% | 13.50% |
標準偏差 | 9.15% | 12.98% | 7.68% | 15.50% |
最大ドローダウン | -18.83% | –32.35% | -11.58% | -23.91% |
シャープレシオ | 0.79 | 0.38 | 0.79 | 0.77 |
ソルティーノ比率 | 1.25 | 0.56 | 1.22 | 1.18 |
ベンチマーク相関 | 0.89 | 0.69 | 1.00 | 1.00 |
結果の読み解きポイント
年率リターン
- 最も高いのはS&P500単独で13.5%。リスクは高いですが、リターンを最大化したい人に向いています。
- 一方、FIREマニアは9.14%と健闘。金や現金を混ぜることで下落耐性を高めつつ、そこそこのリターンを得ています。
リスク面(標準偏差・最大ドローダウン)
- カウチポテト現金50はリスクが最も低く(標準偏差7.68%、最大ドローダウン-11.58%)、安心感がありますが、リターンも抑えられます。
- カウチポテト債券50は下落時に特に弱く、最大ドローダウンは-32.35%。安全資産と思われがちな債券でも、ETFのEDVを採用しているため組み方によっては大きな損失。
シャープ&ソルティノレシオ
- FIREマニアとカウチポテト現金50が最も効率的(シャープレシオ0.79)。リスクとリターンのバランスが良い。
- 下振れリスクに着目したソルティノレシオもFIREマニアがトップ(1.25)で安定性しています。
相関性(分散効果の指標)
- FIREマニアとカウチポテト債券50は分散効果があり、市場との値動きが異なる傾向。
- S&P500に完全連動しているのはカウチポテト現金50。米国市場のクラッシュのインパクトをモロに受けます。
結論:FIREを目指すなら「リスクに耐えられる設計」が鍵
「高いリターン=良いポートフォリオ」ではありません。
FIRE後は資産の引き出しも必要になるため、「暴落時にどう耐えるか」も重要な視点です。
- リターンを最大化したいなら → S&P500一本勝負
- バランスを重視したいなら → FIREマニア版
- リスクを最小限に抑えたいなら → カウチポテト現金50
投資は自分のリスク許容度に合わせて。ぜひ今回のデータを参考に、自分だけのFIRE戦略を設計してみてください!