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出口戦略|公的年金を75歳まで繰り下げてiDeCoの税金を最適化する作戦を考えた

目次

※私は法律の専門化ではなく個人的な解釈によるものです。最終的には各機関の情報をご確認ください。

1. 戦略の概要とメリット:定年後の手取りを最大化するハイブリッド活用

定年後の資産受け取りにおいて、税負担を最小限に抑え、手取り額を最大化するための60歳以降の出口戦略を紹介します。この戦略の核心は、「退職所得控除」「公的年金等控除」という2つの強力な税制優遇を、時間軸で完全に分離し、それぞれを最大限に活用することにあります。

尚、出口戦略全般については以下をご参照ください。
ポートフォリオ|FIREの出口戦略は本当に安全か?定率4%取り崩しを検証
4%ルールとは?|FIREの出口戦略

戦略の主な構成要素

アクション時期適用される税制優遇メリット
一時金受取 (iDeCo/小規模共済の一部)60歳退職所得控除勤続年数に応じた大きな非課税枠で、受け取り資産の税金をゼロにする。
年金受取 (iDeCo/小規模共済の残り)60歳〜75歳公的年金等控除・基礎控除年間受取額を非課税枠内にコントロールし、生活費を税金ゼロで賄う。
公的年金繰り下げ (老齢年金)75歳まで繰り下げ加算終身で受け取る年金額を最大84%増額させ、老後の経済基盤を強化する。

60歳から75歳までの期間は、公的年金を繰り下げて受け取らないため、iDeCoなどの年金収入が「公的年金等控除」の非課税枠を独占でき、税金ほぼゼロを達成しやすくなります。この緻密な計画により、資産形成期の優遇(掛金控除)だけでなく、受け取り期の優遇も最大限享受することが可能となります。

2. 公的年金等控除+基礎控除のポイント

老後に受け取る iDeCo 年金や公的年金は、税法上「雑所得(公的年金等)」として扱われます。この所得を計算する際、公的年金等控除基礎控除 を合わせて使うことで、年金収入を大きく非課税にできます。

● 1. 公的年金等控除

年齢に応じて最低限の控除額が設定されています。

  • 60〜64歳:60万円
  • 65歳以上:110万円

実際の控除額は収入額に応じて変動しますが、最低でも上記の金額が控除されます。

● 2. 基礎控除(48万円)

すべての人に適用される所得控除で、
合計所得金額が 2,400万円以下であれば 48万円 が控除されます。
※住民税の基礎控除は43万ですが簡略して48万としています。

● 3. 2つの控除は「合算できる」

年金の課税所得は次の式で求めます。

課税所得=年金収入 − 公的年金等控除 − 基礎控除

したがって、年金以外の所得がない場合、

  • 60〜64歳:年金収入108万円まで非課税
  • 65歳以上:年金収入158万円まで非課税

● 4. iDeCo年金との相性

公的年金を繰り下げて受給を開始しない期間(60〜75歳)は、
iDeCo年金が公的年金等控除を独占 できるため、
年金収入を非課税枠内に調整すれば、長期間「税金ほぼゼロ」で取り崩すことが可能になります。

3. 資産計画シミュレーションとしての例

以下に、企業退職金がない場合の資産額に基づき、所得税・住民税をゼロ(非課税)で受け取るための具体的なスケジュールを示します。

前提条件

項目詳細
iDeCo加入期間20年(40歳〜60歳と仮定)
企業退職金0円
小規模企業共済300万円
iDeCo総資産2,500万円

ステップA:60歳時点での非課税一時金受取

項目計算式・控除額受取額課税対象額
退職所得控除枠40万×20年=800万円
小規模共済控除枠を使用300万円0円
iDeCoの一部控除枠を使用500万円0円
一時金合計800万円800万円0円

iDeCo残高2,000万円を年金原資として残します。

ステップB:60歳から75歳の非課税年金受取スケジュール

iDeCo残高2,000万円を15年間で、公的年金等控除と基礎控除を合わせた非課税枠内で受け取ります。(公的年金受給なし、年金以外の所得なしを前提)

期間年間非課税受取上限額期間(年数)期間中の総受取額備考
60歳〜65歳未満108万円 (60万+48万)5年間540万円非課税枠が比較的狭い期間。
65歳〜75歳未満158万円 (110万+48万)10年間1,580万円非課税枠が広がるため、受取額を増額。
合計15年間2,120万円

【結果】 運用益を含めれば、iDeCo残高2,000万円を全額非課税で生活費として取り崩すことができ、75歳からの公的年金は最大84%増額された状態でスタートできます。

※住民税の基礎控除は43万ですが簡略して48万としています。住民税もゼロにする場合は43万で計算してください。

4. 一次情報・関連情報の確認先

一次情報リンク一覧(公式サイトのみ)

■ 1. 退職所得控除(iDeCo一時金・小規模共済一時金)

国税庁:退職所得の金額の計算方法
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1420.htm

国税庁:退職所得控除額の計算
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1422.htm

■ 2. 公的年金等控除(iDeCo年金・小規模共済年金)

国税庁:公的年金等の雑所得の計算(公的年金等控除)
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1600.htm

国税庁:公的年金等控除額表(控除額の階層別)
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1601.htm

■ 3. 基礎控除(48万円の所得要件)

国税庁:基礎控除
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1199.htm

■ 4. iDeCoの制度詳細(掛金・受け取り・税制優遇)

国民年金基金連合会(iDeCo公式)
https://www.ideco-koushiki.jp/

受給方法の説明(年金・一時金・併用)
https://www.ideco-koushiki.jp/start/receive/

■ 5. 小規模企業共済の制度

中小企業基盤整備機構:小規模企業共済公式サイト
https://www.smrj.go.jp/kyosai/

共済金の税制(退職所得扱い)
https://www.smrj.go.jp/kyosai/tax/

■ 6. 公的年金の繰り下げ受給(最大75歳まで、最大84%増)

日本年金機構:老齢年金の繰下げ受給
https://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/roudou/roureinenkin/20150401-02.html

繰下げ受給の増額率(1ヶ月0.7%)
https://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/roudou/roureinenkin/20150401-03.html

■ 7. 住民税(公的年金等控除・基礎控除の地方税側)

※年金関連の非課税判定で重要
総務省:個人住民税(住民税の控除等)
https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/jichi_zeisei/czaisei/czaisei_seido/ichiran09.html

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